支那剰余定理

$A$ を可換環, $n$ を 2 以上の自然数とし, $I_1, \dots, I_n$ をどの 2 つも互ひに素なイデアールとする.このとき,以下が成り立つ.

  1. 任意の $i = 1, \dots, n$ に対して, $I_i$ と $I_1 \cdots I_{i-1} I_{i+1} \cdots I_n$ は互ひに素である.
  2. $I_1 \cap \dots \cap I_n = I_1 \cdots I_n$.
  3. $A / (I_1 \cap \dots \cap I_n) \simeq (A/I_1) \times \dots \times (A/I_n)$.

proof. 1. $i=1$ として一般性を失はない.いま仮定から $j = 2, \dots, n$ に対して $I_1$ と $I_j$ は互ひに素だから, $I_1 + I_j = A$ となるので,うまく $x_{1j} \in I_1$ と $x_{2j} \in I_2$ を選ぶことで $x_{1j} + x_{2j} = 1$ とできる.このやうに選んだ $x_{11}, x_{21}, \dots , x_{1n}, x_{2n}$ について,

$$ (x_{11} + x_{21}) \cdots (x_{1n} + x_{2n}) = 1 \cdots 1 = 1 $$

である.ここで左辺の展開を考へると,$1 \in I_1 + x_{21} \cdots x_{2n}$ だから $1 \in I_1 + I_2 \cdots I_n$ である.したがつて $I_1 + I_2 \cdots I_n = A$ である.∎

2. $n=2$ での成立を示す.イデアールの定義から $I_1I_2 \subset I_1 \cap I_2$ は明らか.いま $I_1, I_2$ は互ひに素だからある $x_1 \in I_1, x_2 \in I_2$ が存在して $x_1 + x_2 = 1$ となる.勝手に $a \in I_1 \cap I_2$ を取ると, $a = a1 = a (x_1 + x_2) = ax_1 + ax_2 \in I_1I_2$ より $a \in I_1I_2$ である.したがつて $I_1 \cap I_2 \subset I_1I_2$ である.

よつて $n \geq 3$ のとき帰納的に $I_1 \cap \dots \cap I_n = (I_1 \cap \dots \cap I_{n-1}) \cap I_n = (I_1 \dots I_{n-1}) \cap I_n = I_1 \cdots I_n$.∎

3. $n=2$ での成立を示す.写像 $$ f: A \to (A/I_1) \times (A/I_2); a \mapsto (a+I_1, a+I_2) $$ は全射な準同型である.準同型定理より

$$ A / (\operatorname{Ker} f) \simeq (A / I_1) \times (A / I_2) $$

である.ところで, $\operatorname{Ker} f = I_1 \cap I_2$ であるから, $A/(I_1 \cap I_2) \simeq (A/I_1) \times (A/I_2)$ である.

よつて $n \geq 3$ のとき,

$$ \begin{aligned} A / (I_1 \cap \dots \cap I_n) &= A / ((I_1 \cap \dots \cap I_{n-1}) \cap I_n) \\ &= A/((I_1\cdots I_{n-1}) \cap I_n) \\ &\simeq A/(I_1\cdots I_{n-1}) \times A/I_n \\ &= A/(I_1 \cap \dots \cap I_{n-1}) \times A/I_n \\ &\simeq (A/I_1) \times \dots \times (A/I_n).∎ \end{aligned} $$